ディズニーシー観察記



始めに
2013年6月2日にディズニーシーに観察に行ったので報告する。
観察の主眼は,エンターテイメントとエンジニアリングの関係である。
人を喜ばせるためにどのようにエンジニアリングが使われているかを観察した。

この報告は,私の主観に基づく物で有り客観性,データ的正確性は担保されない。
当日はアトラクションを9件体験し,ショーを3つ見た。
園内の土産物店,ファーストフード店などの利用も行った。

1.アトラクション・・・体験したものを順に感想や技術面をコメントする。
 ・アクアトピア
   水面を高速かつ一見ランダムに動くビーグルに乗るタイプのアトラク
  ションである。
  一番の問題は動力である,大トルクの動力を使っているが,ビーグルに
  は大容量のバッテリーを積む容積が無いし,アトラクション周辺に充電設
  備も見あたらない。また多数のビーグルを狭いエリアで走らせているので
  ビーグルの自律運行は安全性の面でも難しいだろう。ウイキペディアには
  「走行エリア周辺にマーカーをおき,ビーグル上部の回転センサーにより
  GPSと同様な原理で位置測定をし走行している」との記述があるが,これ
  は前記した自律運行の危険性と,GPSの原理からして信用出来ない。
  私は,水底下にリニアモータを敷設しビーグルを駆動しているのではない
  かと考えている。

 ・海底二万マイル
   クリーチャーなどを配したトンネル内を小型潜水艇を模したビーグル
  に乗り移動するタイプのアトラクションである。
  トンネル内に配したクリーチャーはLEDなどを使い効果的に演出されて
  いる。
  このアトラクションの「肝」は,移動するビーグルの窓である,半球状
  のアクリルを隙間を開けて二枚重ね,その隙間に色のついた液体を封じる
  事でまるで水中を覗いている様な効果を出している。また潜航,浮上時
  にはこの液体内に下から気泡を入れる事で潜水艇の上下移動の雰囲気を
  作っている,これは秀逸なアイデアである。
  ストーリーを見るとレイドの後半で潜水艇は巨大イカに捕まり,窮地に
  見舞われナゾの宇宙人(海底人)に助けられるのだが,過去ネモ船長が
  助けたクジラがイカを撃退して呉れるというようなストーリーの方が
  今どき風で良いと考える。
  降りてから出口に向う通路で親に連れられた女の子が「タコが恐かった
  よ〜」と泣いていたのが印象的だった(タコじゃなくてイカなんだけ
  どね)。
  技術面として注目したのは前記窓内を満たす液体の管理である。長期に
  渡り使用してるので劣化などの管理は難しいと思われる,また温度管理も
  厳密に行わないと窓の内外が結露し,雰囲気を損なって仕舞うはずである。
  無粋な事を言えば,潜水艇の窓の内側は艇内の温度が海水温より高いのが
  通常であるので,常に結露し,乗員は頻繁に窓を拭いている。
  あるブログに「最低二万マイルだ」と酷評されていたが,私はかなり楽し
  めたし,高度なエンターテイメントを感じた。

 ・トランジットスチーマーライン
   園内に配された池を移動する外輪蒸気船を模した船である。
   当然,池底に配された線路に沿って動くのようになっている。
  動力はディーゼルエンジンでスクリュー駆動の様だ,陸上から船の動きを
  見ていると,線路に接する台車は船体の前部についている様で旋回時後部
  船体は適度にドリフトしている。舷側の外輪は風車回転しているだけの飾
  りの様だ。
  線路により誘導されているので乗員の操舵は不要の筈であるが,キャスト
  は一生懸命舵輪を操作し操舵している様に演技をしている。

 ・ベネッチアンゴンドラ
   訓練されたゴンドリエにより操船される本物のゴンドラ。
  大型のゴンドラを2名の乗員で操船するが,前方にのる乗員はエンターテイ
  メント担当,後部乗員が殆どの区間操船する。
  技術的な面は薄いが,運河に掛かる橋の装飾が中々凝っていた,橋の裏側
  に漆喰や剥がれ中のレンガがむき出しになってる絵が書いてあったり,鉄の
  橋脚が汚れ古びているようにウエザリング加工されていた。
  ちょっと残念に思ったのは,石造りのアーチ橋を模した橋が幾つかあった
  のだが,要石からアーチ部,橋の下(裏側)までキチンと石造りを再現さ
  れて居なかった事だ。

 ・シンドバット・ストーリーブック・ヴォヤッジ
   両側に配された動くクリーチャー(アニマトロニクス?)を見ながら船
  で回りストーリーを楽しむアトラクション。
  ランドのイッツ・スモールワールドと同様のアトラクションである。
  イッツ・スモールワールドとの時代差は40年以上あるのでクリーチャーの
  動きが複雑になり,音声もクリーチャーから聞こえて来るように調整され
  ている。
  技術的な面を見ると,前述したように「音」の使い方,聞かせ方が秀逸で
  あり,コーナー毎の遮音,クリーチャー毎の音像定位,動作と同期など
  厳密に管理されいる。
  「子供の夢,おとぎ話」と言えばそれだけであるが,他国へ冒険旅行を
  し(地元の蛮族と戦い)宝物を見つけ(収奪し)帰国し英雄になるという
  ストーリーは私は好まない。

 ・センター・オブ・ジ・アース
   ゴムタイヤのついたクロスカントリー車を模したビーグルでトンネル内を
  巡り,最後にジェットコースターの様な動きで急坂を駆け降りるアトラクシ
  ョンである。
  例の如く,乗り場までのアプローチの飾り付け(展示)などは凝っており
  待ち時間を飽きさせない工夫をしている。
  最後の急坂のであるがトンネル内で急加速をし坂を駆け上がり明るい所に出
  て落下する機動は意外性もあり暗い所から明るい所に出る環境の変化も大き
  く恐怖感を倍増させている。Gメータで加速度を計って見たが落下時は0.5G
  のフルスケールをオーバーフローしていた,感覚的には0.8G位で自由落下に
  近い負の加速度を感じていると考える。
  急坂を登る為であろうゴムタイヤを使ったビーグルは遊園地の乗り物とし
  ては珍しく乗り心地も独特である,動力はモーターの様で独特のトルク感
  (加速感)を感じる。
  乗り場にあったスタッフ用の通路が坑道を模しており,中から槌音が聞こ
  えてくる演出をしていた。
  また乗り場ではスモークを焚き下面が見えない工夫もされている。

 ・エレクトリックレールウエイ
   昔の高架鉄道を模した第三軌条から給電している2’6”軌間の電車で
  あり園内移動のアトラクションである。
  運転はATOの自動運転の様だ。緊急ブレーキ操作を担当し案内を行う車
  掌が乗務している。
  電車に関しては技術的に特別に語る面は無いが,両端駅直前に複線から
  単線にするポイントが有り,ジョイント音がする。このジョイント音を
  昔の高架鉄道のように響く工夫がしてある,これは駅前後の高架に一部
  薄い鉄板を使って音響効果を高めているのだと考えられる。

 ・フォートレス・エクスプレーション
   砦を模した建物を中を入場時に渡されるクイズを解きながら探検して
  歩くアトラクションである。
  砦はアラブの影響を受けたスペイン風と見えた,砦の主はレオナルド・
  ダ・ビンチであり,砦の装飾やしつらえもルネスサンス期の科学イメー
  ジで作られている。
  と,言ってもずっと後年に発明されたフーコーの振り子や,地動説に基づく
  太陽系の模型など,時代考証が正確なわけでは無い。
  人が歩き,体験するアトラクションであり技術という面より「体験の楽し
  さ」が心地良かった。

 ・タワー・オブ・テラー
   不規則に上下するエレベータで落下の恐怖を楽しむアトラクションであ 
  る。Gを計測した所,一瞬だが自由落下状態になっている様だ。
  アトラクションの前振りとしてブリーフィングがあるが,机上の彫像が
  消えるマジックが素晴らしい。
  また待機列横にディスプレィされている「先代社長の収集品」もそれら
  くしく良い雰囲気を醸し出している。
  アメリカの実業界では成功者は国外の文化品などをコレクションしそれ
  を博物館に寄贈するとか自分で博物館を作るとかがステータスであるよ
  うで,このアトラクションの背景としてその文化を感じた。
  このアトラクションの見どころとしてキャストのコスチュームがある。
  ロングスカートとハイネックのブラウスのコスチュームであるが,ブラウ
  スはふんだんに刺繍が入り,スカートも良い生地を使っているのが見て
  とれ,高級感を醸し出している。

2.ショー
 ・レジェンド・オブ・ミシカ
   園内で最大面積の池「メディチレーヌアンハーバー」を使って行なわ
  れる大規模なショー。
  多数の水上バイク(8台?)と5台の台船を使って行なわれる。
  台船と書いたが池底をタイヤで走る自動車状の物である。
  水上バイクのパフォーマンスでスピード感ダイナミック感を出し,台船上
  の様々な仕掛けでスペクタル感を出している。踊りは,台船上から始まり
  台船を着岸させ観客の前に上陸したキャストとディズニーキャラクターに
  よって行なわれる。
  台船上の仕掛けは様々あり,タマゴ上の構造物の上部が開きキャラクター
  が出てきたり,塔がせり上がり頂上で踊り子が踊るなど様々である。
  塔がせり上がる時には,ジャッキで台船を持ち上げ安定させているようだ。
  技術的には,分散した台船上の動きの同期とか台船の位置制御とか興味が
  尽きない。
  ショー会場の音響設計については詳しい人の解説を待ちたい。
  解説によると壮大なストーリーがあるようだが,ストーリーと目の前で
  起こってるショーとの関連が薄く感じた。

 ・テーブル・イズ・ウェイティング
   屋外ステージでのレビューである,このショーではミッキーとミニーの
  登場の必然が作られている。
  良く訓練され練られたショーであると思うが,「食」をテーマにしてるの
  だから,「あぁ美味しそうだな食べたいな」と思わせる要素が欲しい所だ。
  オードブルにメキシコとインドの料理が出てその後アメリカのハンバーガー
  メインは日本のお祭り寿司??,そしてデザートにフランス菓子ってのは
  取り合わせとして酷過ぎる。
  ショーとして楽しませる部分,コミカルな動きで笑わせる部分は良いが
  終わりの方のスプラスチックな部分は蛇足と感じた。

 ・ファンタズミック!
   園内で最大面積の池「メディチレーヌアンハーバー」を使って行なわ
  れる夜の暗さを利用した大規模なショー。
  台船を4台,小型の船を数隻使っていた様だが全貌は観察し切れなかった。
  特筆すべきは大量の画像情報の表示の技術だろう,移動する台船にリアル
  タイム配信なのか,あらかじめ台船に用意したコンテンツの表示なのか
  判らないが,大量の画僧情報を空間伝送させるにせよ,同期を取るにせ
  よ,大変高度な技術ガ使われている。

3.食事
 ・ノーチラスギャレー
  昼食に利用した,メニューはターキーレッグと棒餃子。
  正直,ガッカリ感が強かった。スモークしたターキーは肉が硬く,油も強く
  半分残してしまった。餃子は焼いてから時間が経ってるようで,べちょべち
  ょで具の味もハッキリせず美味しいとは言えなかった。場所といい雰囲気
  といい好感が持てたのだが料理に関して一考して欲しい所だ。

 ・ニューヨーク・デリ
  お茶の休息として利用,私はコーヒーとベーグルサンドを食した。
  「普通の味」と言ってしまえばそれまでだが,店の雰囲気,料理とも及第点
  だと思う。歩き疲れた身体をユックリ休ませるのには良い雰囲気だった。

4.全体・世界観
   建物やシーナリーの作り込みはさすがであり,所々に配してある古い
  馬車や自動車,船なども本物が使われて居たりして流石というほか無い。
  特にイタリアの町や古いニューヨークの雰囲気などアトラクションに
  捕らわれずユックリ見て回りたいと感じさせた。
   大変に残念に思ったのがお土産物だった,妻に買って帰ろうと色々見
  たがキャラクターの入ったカラフルなプラスチッキーな物ばかりでキチン
  とした品質を感じさせる物が見当たらなかった(探し方が悪かったのかも
  しれないが)。

  世界観に関しては,建物などキチンと作り込みプレゼンテーション出来
  ていると思うのだが,折角それだけの事をしているのに,ディズニー
  キャラクターの存在がミスマッチで非常に違和感を感じた。それが残念
  でならない。当初キャラクターに頼らないコンセプトでスタートし,後日
  観客からの要望でディズニーキャラクターの露出を増やしたなどの経緯が
  あるのだろうか。

 ・安全管理面
  動くアトラクションに関しては安全管理者が置かれているようで彼(彼女)
  らは,ビーグル乗降場の操作卓につき,アトラクション全体に目を配り,
  右手を必ず停止スイッチ上に置いていた。どのアトラクションでも何か
  異常があったら即座に停止させる体制にあるようだ。





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